ひとりでに自分が鳴るのを待つ
賢治は書くというより、鳴るんです。
賢治は楽器です。
何かを体験したり、感じたり、出会ったりすると、
賢治という楽器が鳴り響いて、
ぽろぽろと言葉がこぼれ落ちてくる。
-夢枕獏「秘伝「書く」技術」より-
昨日、『100分de名著スペシャル 100分de萩尾望都』を見ていました。
久しぶりにテレビってすばらしいと思える番組で
今まで読んできた望都先生の作品について
自分の中で深まったような気持ちになりました。
「ポーの一族」「半神」は私のとって神のような作品です。
2020年のコロナ禍でたくさんの大事な命が失われて
急に自分にとっての大事な物語になったのが「トーマの心臓」。
誰かを、何かを、生かすために死ぬという
ずっと不可解だった物語が、鋭さをもって刺さってきました。
「イグアナの娘」はまさに自分なので読むのが辛い物語ですが、
毒母の悲しみまで描き切っているところや
その悲しみがなくならず世代を超えて生き続けていく
背筋が凍るような余韻にホラー以上のホラーを感じています。
この番組では取り上げられなかったマイナーな作品では
「船」という短編が忘れられずにいます。
ずっと私の中でひっかかって離れてくれません。
萩尾望都作品は私の中で鳴り続けています。
この番組には夢枕獏先生がゲスト出演されていて、
ふいに冒頭の「秘伝「書く」技術」にあった文章を思い出しました。
宮沢賢治や萩尾先生だけでなく
すべての人が自分の中に楽器をもっていて
絶えず鳴っている。
鳴り響いていると私は感じます。
どうしていいかわからなかったり
気持ちがシュンと萎えてしまったときは
「ひとりでに鳴るのを待つ」こと。
どの選択が正しいのか。
どうしたらうまくいくのか。
そんな焦りがあればなおさら
静かに鳴り響いてくるのを待った方がいい。
自分を鳴り響かせるのにも実はコツがあって、
私自身も今まで試行錯誤してきたのですが、
今いる場所に全力でのぞむこと。
これしかないように思います。
目の前にある仕事が私の答え。
だから、それに集中して、ひとりでに鳴るのを待つ。
ないものを引っ張り出そうとしたり
自分を脅かしたり追い立てたりしない。
私の感覚では集中や没頭によって
鳴りだしてきます。
何でもいいから、
仕事と関係なくてもいいから、
目の前にあって
すぐに手に取れるものを全力でやってみましょう♬
賢治のもつ楽器はすべての人に与えられた楽器でもあるのだから。
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